まだ世界にない【美しいアウトドアブランド】を作る。
と目標を掲げたものの、ほとんど高岡の職人の事を知らなかった自分は、まず高岡の伝統工芸や職人の技を学ぶ事から始めました。その時に職人さんと自分を繋ぐガイドをしてくれたのが、後に会社設立に大きく関わることとなった漆器くにもとの4代目、現artisan933の国本部長でした。
国本はUターンで家業を継ぎ、高岡のほとんどの職人のことを熟知し、またその人柄で皆から愛される高岡のキーマンで、今も高岡の職人の技をPRするイベント【クラフト市場町】の実行委員長としても活動しています。
最初ブランドの企画を国本に相談した時に、面白そうだからやってみようと意気投合し、高岡の色々な職人の技を紹介してくれる中で、自分の興味を惹いたのが、銅着色の伝統工芸を独自のスタイルで発信しているmomentum factory Oriiの代表を務める伝統工芸士、折井宏司氏でした。
伝統工芸の現状を熱く語り、且つ将来に向けて前向きに発信を続ける姿は職人の概念を覆すカッコよさがあり、また銅着色の技の奥深さや理解することが難しい複雑さに目を奪われ、第一弾商品は折井氏と開発したいと、足繁く工場に通うようになりました。
(記事の写真:左から国本部長 折井氏 木原)
銅着色は金属である銅の不思議な特性を利用し、化学反応で色が変わる摩訶不思議な技法で、真鍮の場合も中に含まれる銅成分が反応し色が変わることから、真鍮製のシェラカップに着色を施した商品が出来れば、美しいアウトドアブランドのテーマにピッタリだと考えましたが、それを実現させるために、本当に多くのハードルがあって、振り返ってみれば、折井氏と銅着色職人の皆さん、国本部長の試行錯誤がなければ絶対に作れなかったと思います。実際商品の企画から完成までに1年ほどを費やしていました。
第一弾商品であるOrii Colormagic Brass Cup が完成し。artisan933ブランドとして本格的なスタートを切ったあと、高岡漆器の技法を活用して、ペグにしか見えない漆塗りのお箸 ’Peg O'hashi’や銅着色の技を使った美しいガスカートリッジケースなども展開しつつ、他社ブランドとのコラボレーションも行っています。
*Klean Kanteenのロゴが高岡漆器の技、螺鈿で表現。A&F直営店で販売中
*同じ富山に本拠地を構えるゴールドウイン株式会社の展開するTHE NORTH FACEと能作のトリプルコラボレーション
商品展開も徐々に増え始め、利賀村を拠点とした地方創生の仕事も少しづついい方向に進んできた時、これから先のことを考えると、artisan933を故郷で法人化することで、より地域に根差した活動ができ、地域社会に貢献することが出来るのではと思い始めました。UターンやIターンで地域で活動する若い人たちに脚光が集まる中、自分はUでもIでもなく。2拠点生活という道を選びました。なぜならそれもまた自分にしかできないことだと思ったのです。
しかし、東京で会社を既に立ち上げている自分にとって、故郷で2社目を起業するなど、突拍子もないことでした。そんな構想を描いてから数年の月日が経ったとある日。国本部長に一緒に起業しませんか?とお願いしたところから一気に風向きが変わりました。
これまで高岡でキャリアを作ってこられた国本部長が会社の役員として参加してもらえることとなり、その人脈のおかげで協力者も一気に増え、自分でも無謀としか思えなかったチャレンジも、気が付けば、周りの協力してくれる人たちのおかげで何も怖くなくなっていました。今にして考えれば本当に無茶苦茶だったと思いますが。
ともあれ
2019年10月1日。国本部長の誕生日に張れて富山県高岡市にartisan933株式会社が発足したのでした。